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富山地方裁判所 昭和48年(わ)32号 判決 1973年11月28日

本籍

新湊市八幡町一丁目一番地

住居

同所 七番一四号

定置網漁業

角谷松次郎

明治三六年五月二一日生

被告事件名

所得税法違反

主文

被告人を懲役八月および罰金五〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二万円〓日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、「大神楽」の名称で漁業を営んでいるものであるが、将来の不漁期に備え、水揚げした魚類の一部を架空名義あるいは漁業協同組合を通さないで販売し、これを正規の帳簿に計上せず、これに対する所得税を免れた上、資金を蓄えようと企て、

第一  昭和四五年三月一三日、高岡市博労本町五-三〇所在の高岡税務署において、同署々長に対し、昭和四四年分の実際所得金額は二、九一五万四三八円であり、これに対する所得税額は一、〇六七万四、六〇〇円であるにも拘らず、同年分の所得金額は一、〇八七万六、〇五二円、所得税額は二九六万三、七〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額七七一万九〇〇円の所得税を免れ、

第二  同四六年三月十五日前同所において、同税務署長に対し、昭和四五年分の実際所得金額は八、五二七万九、四一二円であり、これに対する所得税額は四、〇三四万七〇〇円であるにも拘らず、同年分の所得金額は三、五五一万九、二八三円、所得税額は一、一六七万二、九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、正規の所得税額との差額二、八六六万七、八〇〇円の所得税を免れ、

もつて、偽りその他不正の行為により確定所得申告に係る所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

全部の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述ならびに検察官に対する各供述調書および被告人に対する大蔵事務官の各質問顛末書

一、二口外吉、矢野茂一の検察官に対する各供述調書

一、大蔵事務官の二口外吉、金子芳子、棚辺与芳に対する各質問顛末書

一、中村宗一、八島芳信、杉山健一、安吉孝一、釣谷正一の各供述書

一、金子芳子、高木とみ子、三箇清悦、岩黒信一、二口外吉(但し漁夫歩合金の未払金についてと題するもの)各作成の上申書

一、大田成博の査察事件調査事績報告書五通

一、山元肇の査察事件調査事績報告書一通

一、押収してある金銭出納帳一冊(昭和四八年押第二一号の6)、雑書一綴(同号の7)、売上帳一冊(同号の8)、元帳一冊(同号の9)、伝票綴六綴(同号の10)、水揚帳一冊(同号の11)、

判示第一の事実につき

一、高岡税務署長の証明書(昭和四四年分所得税申告書についてのもの)

判示第二の事実につき

一、高岡税務署長の証明書(昭和四五年分所得税申告書についてのもの)

一、片口さち子、釣松男各作成の供述書(但し後者は写)

一、大蔵事務官の卯尾仙に対する質問顛末書

一、川口海一、二口友吉、能登三雄、二口外吉(売上除外額ならびに特別手当についてと題するもの)各作成の上申書

(法令の適用)

罰条

判示第一、第二の各所為 いずれも所得税法二三八条一項前段(懲役および罰金併科)

併合罪加重

刑法四五条前段、懲役刑については同法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

罰金刑については同法四八条二項

労役場留置

同法一八条

刑の執行猶予

刑法二五条一項(本件は計画的で、そのほ脱額も可成り多額であり、かつほ脱率も高い等の点でその責任は重いものと言うべきであるが、被告人は永年各種公職に就き、地域社会に貢献して来たもので、前科前歴はなく、又その後本件ほ脱税額はもとより、加算税、延滞税として金一、五〇〇万円余を納付し、既に社会的制裁をも受けたものと認められ、改悛の情も窺われること等の情状を考慮した)

(出席検察官 桜井浩)

(裁判官 近藤道夫)

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